高い窓

高い窓

高い窓

気難しい富豪の未亡人からの依頼を受けた私立探偵フィリップ・マーロウは、彼女の秘書であるかたくなでどこか子供っぽい若い娘、マールの不幸そうな様子が気にかかる。そしてマーロウを尾行してきた無名の同業者と接触した後、彼は立て続けに起こる殺人事件により警察の捜査網にかかる苦境に陥る。
マーロウの人間的な面がこれまで読んできたシリーズの中ではもっとも出ているように感じて、これも好きな作品となった。たとえば下町のカウンター付きドラッグストアで、粋な言葉をあえて連発して「ハリウッドじゃああいう手合いがごろごろいるんだ」と皮肉られたり、傲慢な映画監督にののしられたバーテンダーにやつあたりで絡まれたり、極めつけはマーロウはもっとも救うべき“心”の、その壁を突き破れずに物語は終幕する。村上新訳が刊行中の現時点では「ロング・グッドバイ」と並んでこの「高い窓」が面白い。