五色の舟

原作である小説版では、クライマックスで急激に目盛りが上がるSFジャンル濃度のために、それまでの主人公たちの一般から逸脱した暮らしぶりはあえて淡々とした調子で書かれていたが、この翻案された漫画版では、日常のフレームの外を知る前の主人公の感情や感性にむしろ重きが置かれており、味わいはやはりお互い微妙に異なる。作家性を比べることが出来て“一粒で二度美味し”かった。面白いのは、エピローグ部の印象は似通っていることで、これはまるで“船”と“舟”が接近したりする作中のモチーフと重なるようではないか、と。