かぐや姫の物語('13/監督:高畑勲)

数週間経った今、かぐや姫が最後に見せた表情の意味にとらわれつづけている。そこに含まれた言葉にならない感慨。彼女はふたたび、地上に生まれてくる。私はそう結論づけた。そしてまた後悔する。混乱と悔悟の中、生を閉じる。それでも、みたびよたび、地上に降りる衝動をおさえきれない。生とは呪いであり(劇中の解釈でもっとも見事なのはかぐや姫の生まれたあとの竹やぶから金子がみつかるくだりで、それは天からの援けでなくむしろ彼女の生きづらさを後押しする悪意のようなものなのだ!)それでいて、無条件に歓びなのだ。そんな恐ろしい物語をとうとうむきだしに突きつけてきた高畑監督の気概に圧倒される。日常のしぐさを丁寧に描くのは、それがふいに途切れたときの不穏さのため。牧歌的なアニメ創作者だなんて、私はとんだ錯誤をしていた。かぐや姫が何度も喜びと悲しみに震えて口ずさんできた今様の、不協和音が耳にこだまする。ここまで複雑な心理を描いたアニメ映画は、あるいはこれまでなかったかもしれない。