「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」第21話『決戦前夜』

いよいよ人類の生存を賭けた地球挙げての総力戦を前に、家族というテーマを変奏して描いたエピソード。ドラスティックな展開はなく、会話のやりとりでチーム・ラビッツ(なかでも密かなライバル関係にあったイズルとアサギ)のこれまでの心の変遷を総括した内容になっている。
前半は、そうとはいまだ知らされないままに遺伝子上の父であるシモン司令に、生命を賭けた決戦に臨む決意を語るイズルという親子対峙がハイライト。これまででもっとも本音に近い言葉と捉えられる『僕たちは戦うために生み出された命です』という諦念の籠ったようにも聞えるものいいに視ていてハッとする。この時、アサギから得た情報を直観的に総合して(その能力がイズルは高いという描写があったはず)シモンを父だと意識下で"知って"いるのだと仮定すると、じわじわと後を引く感動が湧いてくる。しかし、表面上はあくまで前後から突出しない演出付けになっており、作品の特色がよく出たシーンでもある。イズルの決意を聞いた直後に、作戦総司令の要請を承諾するシモンという流れもまた同様。
後半のドラマの主幹はブルーファイブのピットクルーであるアンナの捜索で、アサギが中心に置かれている。前線に出ない軍属たちのスターローズ退艦命令が出された中、任務や家族と離れる事を嫌うアンナの幼さを受け止めるアサギをほどよく引いた距離感であぶりだすシナリオは、東映の幼少年代向けアニメで多く仕事をしてきた吉田玲子ならではという感触で、ロボットアニメから半歩ズレたのんびりさをあえて緊迫した状勢の中で描いておく、これも前半と同じく本作らしい演出趣向だった。