「有頂天家族」第2話『母と雷神様』

予想に反して、サブタイトルで挙げられている雷神キャラクターは登場しない。しないというか存在を描かれない。ここでの「雷神様」とはいきなり訪れる青天の霹靂、一般化された不幸の暗喩なのだ。男装して気丈にふるまう母狸、面白いことだけをあえてやって生を楽しもうという息子狸。彼ら家族が数年前に味わった父狸の喪失という悲劇を、ストレートだがシリアスさに寄りかからず提示してみせた構成の仕掛けにはすなおに不意を付かれた。ファンタジックでカラフルな世界観と同じ水平に置かれた不幸の結節点。視る者の肩にそっと手を置くようなさりげない癒しを感じさせられる。そして更に素晴らしいのは、コミカルでスペクタクルな化け合戦が同じ回で描かれていること。押入れの奥から見つけたおもちゃ箱のように楽しい橋の上でのシークエンスだった。涙あり笑いあり。こんな人情芝居アレンジをアニメ番組でお目にかかれるとは、多様性万歳であります。