リアル〜完全なる首長竜の日〜('13/監督:黒沢清)

黒沢監督にめずらしく非・単館系バリバリな、恋愛ドラマを主幹とした作品… なのは確かだが、実存懐疑ミステリー/ゾンビホラー/恐竜大暴れアクションの要素が入り混じって一種、キメラ的怪作と評したくなる衝動に駆られる。同じく複数のジャンル要素を混ぜ込んだもので有名な邦画「幻の湖」に比べれば比較にならないほど整っているあたりは流石ではあるものの、劇中もっとも派手な終盤の一連のシーンは、物語の主役の脳内から生み出された想念の具現体……という域から大分にはみだしている上にその直前の詩的な三者対決の余韻をぶち壊してもいるので、劇場で観ていたまさにその時から今にいたるまで、そこだけが蛇足に感じられて残念で仕方がなかった。さらには、娯楽要素を入れないと黒沢監督でさえ新作が作れないのが現在の映画界なのかと思うと、モヤモヤと不安な気持ちにさえ襲われるのだった。通常とは逆の、尺を短くしたディレクターズ・カット版がもし出たらぜひ観直したいです。