自由論

自由論 (光文社古典新訳文庫)

自由論 (光文社古典新訳文庫)

19世紀初頭に生まれた思想家が綴ったエッセイ。個人に対して国家がどこまでの範囲で自裁権を既定すべきかについて主に考察されているが、現代日本に置き換えてもそのスタンダードさに変わりはほとんどないのが面白く感じた。国家に対しては理想論を述べるスタンスながら、個人と共同体に関してはやや保守的に姿勢が取られているあたりは、偏見かもしれないがイギリス人らしいなあとも。自分としては国家に対するのと同じぐらいにはローカル社会がはらみやすい倫理矛盾に踏み込んでほしかったとも思うが、訳者後記にあるとおりにそういった構造のゆるやかさもこの書の持ち味かもしれない。