Arrugas (皺) (’12 監督:イグナシオ・フェレラス)

スペイン出身の漫画家パコ・ロカの老いと友情をテーマにした作品をアニメ化。透明感のある画面が非常に美しい。銀行マンとしてバリバリ働いていた頃の気概を残しつつ、現実と記憶の世界とが混濁した日々を過ごすエミリオが、息子夫婦に伴われてサービスと施設がそこそこ充実した老人ホームに入居する序盤。そこから施設の現実を色々と知り、親しくなった人々の症状が重くなるのを見送り、自身の認識が怪しくなっていくのをうっすらと感じていくわけだが、それらの展開が一本調子に陥ることはないので、我が身に置き換えることが容易であると同時に娯楽作品としても飽きずに視ることができる。エピローグ部は、すわ「キャリー」並のショック・サプライズか?! と一瞬凍りつくが、すぐにその含意に気づいて穏やかで深い感動に包まれる。変えられない事実と、変えることができる現実との併存がそこにはある。