衝撃の絵師 月岡芳年

衝撃の絵師 月岡芳年

衝撃の絵師 月岡芳年

「魁題百撰相」や「月百姿」「和漢百物語」など代表作から万遍なくセレクトされているが、特に「風俗三十二相」と「新形三十六怪撰」は全図が収録。その充実ぶりは手に取った感じのコンパクトさからいうと意外だった。自分は後者を通して見たのは初めてだが、円熟した筆捌きと大胆な発想の構図とモチーフ選びにあらためて見入った。神経の迷いを怪異の現れと意図的に混同させる自意識の強さはまさしくイラストレーションの時代を予感させるもの。自分は芳年のシリーズ作品ではこれが一番好きかもしれない。美術キュレーターの平松洋による巻末解説も、最近に芳年を知った読者向けで読みやすくて良い。浮世絵の最後の時代、美術史における芳年の位置付け、作品歴は明治になってからにむしろ比重がある事などが分かりやすい。