時間はだれも待ってくれない

時間はだれも待ってくれない

時間はだれも待ってくれない

旧共産圏から選ばれた現代SF/ファンタジー短編の数々。全体感想としては、遠未来の科学技術をテーマにした作品があまり無いのだなということ。これは資源を潤沢につかいまくる系統の進歩観を懐疑的に視る文化のためかなと思える。その意味では、やはり都市のかつての姿へのノスタルジックな憧憬をテーマにしたストゥドニャレクの表題作が代表的。不条理さへの人生訓や神学論議に通じる命題をコンパクトかつクールに提示する『列車』(ジヴコヴィッチ)やハンガリーにおける中国ものの隆盛を知ることができる『盛雲(シェンユン)、庭園に隠れる者』(ラースロー)、リアリズムの手法でもってアフター原発事故の村社会を描いた『ブリャハ』(フェダレンカ)もいい。