いちばんここに似合う人

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

内側で醸成されて他者に向かってぽこりぽこりとたまさかに発酵の泡を上げる孤独、友人や恋人といながら常にその繋がりを失う予感を抱きつつ突飛な思いつきを実行させてしまう焦燥。しかしすべてはプールサイドから水をのぞき込んでいる昼下がりのように、ほの暖かく気だるい。そのままでわるくない、けどそれじゃないことは知ってる。ほんとうに私たちみんながそんな感じで生きているんだろう。とすれば、人が分かりあえるのはむしろお互いの間抜けさや間の悪さを共有しあえる時なのだ。アメリカでもこういうよそ行きな顔じゃない小説があるんだなと知らされる機会が、最近は多くなった。