ダールグレン(I・II)

ダールグレン(2) (未来の文学)

ダールグレン(2) (未来の文学)

霧と薄闇で周囲からある日突然隔絶された街、ベローナが舞台なのだが、街に何が起こったのか、街で何が起こっているのかについては全編読み終わった後でもよく分からない。精神病院への入院歴があるという記憶ぐらいしか持たない主人公の若者のように、目の前にあることしか認識できず、時空間の歪みさえあるらしき街で、もはや妙なのは自分の外側なのか内側かすら明らかではない。そこに著されているのは、ひたすらに現在性。いわばライヴ感覚の小説しかもSFジャンルの、という点が発刊当時に話題を読んだのかなとは想像されるのだが、正直いうと自分の読後感はいまひとつモヤモヤとしている。ポルノグラフィ的な箇所の生々しさだけはやたらと鮮烈なのだが。あと暴力描写の方はそれと比すると控えめなので、その傾向は苦手だなという人もご安心を。