雪の練習生

雪の練習生

雪の練習生

夭折してしまった人気者の白熊・クヌートをモチーフに、ヒトに近い思考・言語能力を持ちながらも決してヒトの寓意とならないクマたちの三代記が綴られる。さまざまな境界が融解するアクロバティックな文体世界で、可能性は広がっていくが、しかし飛翔には不安が付き物。あらゆる生き物に共通するルールがあるとすれば、おそらくそれだろう。すべての生涯は練習である。多和田葉子が技巧的にたどたどしい感情発露を表現するのは、テーマがそこにあるからのような気がする。