若手アニメーター育成プロジェクト PROJECT A

文化庁が資金を提供して、応募のあった制作スタジオから企画を選出するという形で若手アニメーター(中心原画マンのインタビュー映像を見るにおおよそ、30代までといった感じ?)の育成をサポートするという短編制作プロジェクトで、毎年行われるらしい。その第一回は、アセンション(代表作「カラフル」)、テレコム・アニメーションフィルムP.A.worksProduction I.G が選出された。以下、各作品感想。
キズナ一撃」:シンプルな筋立てとキャラクターラインはいかにもアニメートそのものの魅力を引き出しそうなものだけど、監督とキャラクターデザイナーが有名かつキャリアが厚いだけに若手参加の勢いがかえって薄まっている観もある。それにしても、本筋とは関係ない猫のサブエピソードがずば抜けて印象に残るのが独特で面白い。
「おぢいさんのランプ」:『ごんぎつね』で知られる新美南吉の童話にしては人間心理が生々しい物語と、頭身の高めでシンプルながら色気のあるキャラクターデザインとが相俟って、教育アニメにありがちなかすかな背徳感のあるミスマッチが見応えのある作品になっている。キャラクターデザイナーはたしか『鋼の錬金術師FA』のクレジットで名前を見かけた。
「万能野菜ニンニンマン」:流行から外れたカートゥーンチックなキャラクターの動きは、これまでのP.A.works作品とはひと味違うもので、プロジェクトならでは醍醐味がある。ただ、脚本の詰めの甘さ(ヒロインのこだわりの原因となった過去の出来事の描写不足)はこれまで通りなのが惜しい。背景美術のローカリズムへのこだわりは一貫性がある。
「たんすわらし。」:全体的なバランス、企画の咀嚼の強さはこれが一番かなと思う。頭身の低い『まんが日本むかし話』のようなキャラクターで、電話アポイントメントの仕事をする中で日々すりきれていくような都会暮らしをする若いヒロインがメルヘンな存在によってそれを補正していくという説教くさくなりそうなストーリーを、ほんわかと気持ちよく味付け。

小粒ながら、まとめて観る分にはたしかに劇場に足を運んでも損はないなと思える作品群になってました。視る機会があった時は是非。