伝奇系
推理小説の様々なモチーフに現代都市伝説の影も隠し味に加えながらも、よくもこうまで雑多な要素を「通りもの」の一言においてまとめあげたなという印象。これは監督による閉鎖空間のようでいて万華鏡の無限を拓くかのようなビジュアル感覚の美学に拠るものが大きい。少女連続失踪事件の発端となった出来事の、おぞましさが反転して水を注されることのないほどの美しさへと反転する瞬間。脳髄が凍りつくかのようで、作家である
語り部・関口の錯視の世界に同化する試みがそこに成立している。匣を抱えていたのは果たして誰だったのか?と。