トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

オースター自身の半生を主な題材としたエッセイ。作家自身はすべて実話、と述べているが、端正に意味を成す偶然の妙の数々にその言を思わず疑ってしまうけれど、素直に信じてもよし、小説家の操る言辞の綾と斜めに捉えてもよしといったところだろう。それらどちらも含めての“トゥルー・ストーリーズ”。個別の素材としては、お互い知らぬままに育った姉弟の皮肉な出会いという知人の知人が伝えるエピソードと、作者の娘が気まぐれに歌った「スイングしなけりゃ意味がない」と過去の堆積とがふいにリンクする気づきの話とが特に印象深い。