ヘリックスの孤児

ヘリックスの孤児 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-9) (ハヤカワ文庫SF)

ヘリックスの孤児 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-9) (ハヤカワ文庫SF)

長編代表作である「エンディミオン」や「イリアム」のそれぞれ後日譚である表題作と前日譚の『アブの月、九日』が特に魅力的。『ヘリックスの孤児』における超未来像は、心もとなさと同時に人類が空間上でも精神次元面でも展開を続けていく事への希望が潜ませられている手管の巧みに感動をそそられる。作者は登山を愛する肉体派というイメージが自分語りテキストや近影から伺えるが、ダイナミックな展開を紙上に許す体力とヒューマニスティックで繊細な気配りが作中に同時に散りばめられているあたり、実に現代アメリカSFを代表する小説家だなと思う。