「喰霊 零」視聴完了

百合アニメ、漫画原作の前章扱い=宣伝目的があからさまなコンテンツ --といった自分の先入観を軽くふっとばしてくれる佳作であった。時にはコメディ回を挟みつつも、全体を貫く死の不穏な匂いに揺らぎがなかったのは、構成における並々ならぬコントロールの表れ。慈しみと憎しみ、生と死、自我と運命といったアンビバレントな感情のドラマと同等に趣向を凝らされた殺陣アクションも見事の一言で、たとえば神楽の父が娘と同世代の少女と殺しあう折に、躊躇なく顔面を殴りつける1カットが象徴的。そして一見地味で損な役回りをあてられた(というか少女二人の当て馬にされたというか)男子高校生・紀之が本作のMVPかもしれない。ただ好き、というレベルでは乗り越えられない困難が世の中にはよくあるという観念が彼の身の振り方によりさりげなく示されていた。エピローグ部のあの笑い声の虚ろさに本作のメッセージ性が凝縮されている。