ぐるっとパス(東京メトロ一日券二枚付き)の旅から

 
夜行バスを降りた新宿で、定期券売り場が開く7:40まで時間つぶし。そこでようやくメトロ乗り放題カード付きぐるっとパス(乗り放題カード二日分付きで2800円)を入手。これで交通費は一日あたり400円で気にせず東京メトロ乗りまくれる。チェックインした後仮眠を取ったホテルを出て最初に目指したのは上野広小路駅不忍池のハスが見所を迎えていて丈高く伸びた様子に圧倒された。池の周囲をぶらりとしつつ横断歩道を越えて旧岩崎邸庭園へ向かう。蒸しているが曇っているので日差しはきつくなかった。屋敷正面まで幅広い砂利敷きのアプローチを歩かされるが、それでも往年より敷地全体が縮小されているのだという。邸内へは下足袋をもらって靴を脱いで上がる。入場料おとな400円で、ぐるっとパスには参加してないがメトロ一日券で数十円の割引があると後から知った。お屋敷内は思ったより広くはなかったが内装の凝り様はどれだけお金がかかってるか計りづらい。特に階段のゴシックさに魅せられる。ベランダなどはアーリーアメリカン風か。大河ドラマ龍馬伝」効果で人がそれなりに入っている。別棟の撞球場と洋館本館が地下道で繋がれているという説明と眺めるのみのそれぞれの階段入り口からは、何やら不穏なものを感じた…

お次は白金台駅が最寄りの東京都庭園美術館へ。写真右が正面からの図、左が庭園から望む反対側。庭園側の方がモダンな感じで明るい印象ですね。現在の企画展示は「没後25年 有元利夫展 天空の音楽」。アジア仏教彫刻のアルカイックさを中世フレスコ画のマティエールで再現したような様式は、日本式西洋館の会場がそのためにしつらえられたように感じるほどだった。その後ぶらりと首都高速沿いに狭く薄暗い小路を散歩がてらに歩いて、わざと遠回り(外苑西通りには小奇麗なスタイルの店や女性が多くて物見高い気分になった)、白金台駅へ戻ってホテルへ帰投。最寄り駅に着いたころには雨が降っていた。

ホテルの部屋の窓から。都会の駅ホームの高さがやけに新鮮。深夜まで人の姿が遠く視認できるのは妙に安心できる光景だった。…深夜にはビジネスホテルらしく、酒が入って通路でテンションだだあがりのリーマン会話が筒抜けの逆防音性を楽しみつつ、それなりに熟睡。目が覚めたのは8:20ごろ。無料の軽食を摂ったあと身支度を終えてチェックアウトぎりぎりの10:00にホテルを出た。こじんまりとしながらもデザインに手を抜かずにサービスも感じよい当たり宿だった。また機会があればリピートしたい。午前中ながら容赦ない日差しを浴びつつ、パチンコ屋の雑音を横目にという駅前お馴染みの光景をあとにメトロの駅へしばし歩く。向うずねが少々張って痛い。ふくらはぎでなく脚前面が筋肉痛というのは、普段自転車使いでさほどは歩いてないせいかなとも思う。


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ホテル最寄りの駅から都心に出るまでの途中下車で、飛鳥山へ。テレビで見たアスカルゴに乗りたかったのだ… 右の写真の方には都電荒川線が。画像下部の銀のバーはアスカルゴの車輌フレーム。無料で二分たのしめるケーブルカー・アトラクションである。飛鳥山ではぐるっとパスが使える紙の博物館北区飛鳥山博物館に入場。紙がリサイクルされるまでを勉強したり、地元の古代遺跡から発掘された人骨がまるっと展示されたりしている意外な生々しさに驚いたりする。北区の生き物コーナーでの鳥や魚のリアルな質感にもビクッとなった… けっこうオススメ施設ですよ。特に後者。下山した後はヒートアップする日差しと雑踏にすでに半分参りながら三越前駅を目指す。目当ての美術館へ入る前に休憩をかねて同ビル内の千疋屋パーラーでフルーツミックスソフトを。メトロ一日券提示により50円引きの300円。にしても銀座は以前からいまひとつ落ち着けない。自分が浮いてる気がしてならない。
三井記念美術館はけっこう混んでいた。近年の人気展覧会の特徴で、中高年世代が目立つ。奈良とゆかりの深い会津八一と仏教美術のコラボレーション展とのことで、知名度のある作品を集めるというのではなく、佳品・名品の中から同系統の繊細の際立つ中小像を借りてきたというコンセプトは結構良かったと思う。サモトラケのニケのように美しいトルソー『唐招提寺 如来彫立像』や四体ワンセットの『西大寺 塔本四仏像』が同時に眺められる第四展示室が特に印象深かった。さてメトロに下りつつしばし考え込む。すでに時間は正午もとうに過ぎ、この後予定した多摩方面行きにはややタイトな時間繰りとなってきた。この後の計画をなぜか最後まで煮詰めなかった自分が悪いのだが。とりあえず新宿方向へ移動することにして車中でも行き先を迷い続ける。結局、バス乗り継ぎがある東京江戸たてもの園よりも武者小路実篤記念館を優先することにして新宿で京王線に乗り換え。片道190円の切符を買ってつつじヶ丘駅を目指す。

…多摩方面はほとんど初めてといっていいぐらいだが、思っていた以上にこじんまりとした駅周辺の雰囲気。ランドマークのなさに不安を覚えつつも、方角案内板やらを頼りに住宅地へと歩きだす。…しばし暑さの中もうろうと迷い、15分か20分かけてたどり着いた。展示会場は思っていた以上に狭いが、目的の半分は調布市という現在放映中のドラマ「ゲゲゲの女房」の雰囲気を味わいたいがためだったので、特に不満はなし(…まあ結局は調布駅深大寺付近は回れなかったわけですが)。付設の庭園は、蚊が多くて参ったが、実篤一家が住んでいた旧宅が外から眺められたのでそこで満足することにする。しかしなんとも密集した住宅地やわあ。なんか暑さも加わって眩暈してきた。
庭園内にポップ板が立てられていた「ヒカリモ」はほんとに上方向に明り取りがあるかのように光ってみえて面白かった。自然環境が多彩である証だそうですよ。わかりにくいけど画像右上あたり、枯れた水路の奥の四角いスペース内ね。この後、都心に戻ってもう一つぐらいは美術展を狙いたかったが、すでに17:00をまわるぐらいで一般的閉館時間が迫っている。心残りとしては東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の『アニメーションの先駆者 大藤信郎』の入場期限時刻にタッチで間に合いそうになく断念した点。無計画さのツケ。 でもなーどこの美術館もせめて19時ぐらいまで開けてもらえないかなとも愚痴りたい時もあったりはする。あきらめて、最終目的地に決めていた押上駅を目指す。もちろん建設中の東京スカイツリーを眺めるためだけにですよー
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画像左は、押上駅を出てすぐ。右はもう少し近づいてから見上げるように。ぐるっと路地をまわりこんで駅へ戻る途中、開け放たれた一階の窓から見えるブラウン管テレビの裏側から「キテレツ大百科」(再放送?)の音声がだだ聞こえてきて、昭和下町の香りが残る裏通り風景にぴったり合いすぎていて思わず一人で吹き出してしまった。…結局、これまで山手線や中央線といったJRをメインにしか交通を使えてなかった自分にメトロ乗り放題カードを使う機会が来たのは金銭面以外でもローカルの雰囲気を味わえるメリットがあったって事の象徴的シーンかなとも思う。トータルとして、文化施設めぐりとしては1000円のお得、交通料金としては二日で940円のお得。『メトロ&ぐるっとパス2010』買って良かったです。これからも上京した際は一日乗車券を考慮に入れる事にしよう。