激しく、速やかな死

激しく、速やかな死

激しく、速やかな死

近代ヨーロッパを舞台とする事の多い書き手だが、本書も時代設定は同じく。ただ、短編集というスタイルでの発刊は初めてなように思う。いくつかは、あまりに文体から形容がそぎ落とされすぎて余韻が生まれる前に終わる読後感を持ったが、最後の二編『アナトーリとぼく』『漂着物』は散文詩に近いリズムがあった。中ほどに収められている『荒地』は例外的な長さだが、そうなると俄然作者の長編が持つ特徴である人間とその生活への視点の鋭さが閃く瞬間が増えて、印象も強まる。やはりどちらかといえば長編向きな人だ。