戦う司書#25「静寂と惰眠と絶望の物語」

物語現時点での世界の成り立ちが明かされる回。これにより、残る謎はハミュッツの奥の手である特殊能力だけになったかな。尺の半分以上が『楽園時代』と呼ばれる、いわば神話世界や聖書の中のような話だったのだけど、そこに導入する仕組みとしてのメタも兼ねた、彼岸へ渡ってしまったキャラたちがコロッセウムに座ってスクリーンに見入るという描写が面白い。まるで、自分が虐げられた理由も死に見舞われた訳も分からないままの人生の“一回性”を救おうとするかのような虚構の企み。
まあ世界の救世主転じて滅亡の魔王となったルルタ自身も、恋人への救いをなんとか成就させようと数世紀を経てきたようではあるんだけど。絶望と希望が尻尾を食い合う、哀しく虚しく優しい無限の物語。そこに力技でねじこんできたハミュッツ。マットの目のよさと近世貴婦人のようなデリケート神経(まああの出血では倒れるのも道理だけどタイミングがw)、カチュアの調子こいた語りの後の一発には笑った。
ところで、駆け足気味の描写だったルルタとニーニウの悲恋物語ノロティとエンリケの交流をなぞったようなライトモティーフの輪唱がところどころにあったようだ。世界を救う道具(神と人間の策謀の綱引き、結局、破滅の最後のひと押しが一握りの人間の功名心であった虚しさ… まああの神官はさておきマキアはそうでもなかったようだけど)として苦しんだのは、ルルタもハミュッツも同じだし。

追記:過去の話数の感想内で、ヨルを追憶の戦機の一つと思っていた勘違いがあったと思うけど今回の過去シーンの描写をみた後公式サイトに行ってようやく気づきました。ルルタが乗っていたのがグラオークグラマーン、右手に持っていたのがグモルクのようですね。ウユララとアッハライはもう出ないのかな?