パワー

パワー (西のはての年代記 3)

パワー (西のはての年代記 3)

三部作の最終巻で、その中では最も力が入った仕上がり。奴隷制度に組み敷かれながらも、それなりに恵まれた環境にある主人公の少年がとある決定的な事件に遭った事でシステムの欺瞞性を直視することになり、そこから自分のルーツを探す彷徨が始まる。少年がさすらう構造は「ゲド戦記」を思わせるし、一族が大きな屋敷に集って暮らす古代の大家族制度を著す筆致は「オールウェイズ・カミングホーム」における人類学の素養に似ている。ただ、主人公の社会的な敵との対決が最後まで避けられているように思われるのは、加齢による作者自身の変化の現れなんだろうなとも感じる。