第35回2015冬調査

アニメ調査室(仮)さんにて開催中。以下、回答記事です。

2015冬調査(2014/10-12月期、終了アニメ、35+2作品) 第35回

01,曇天に笑う,F
02,なりヒロwww,x
03,サイコパス 2,z
04,アカメが斬る!,A
05,ぐらP&ロデ夫,z

06,愛・天地無用!,x
07,フランチェスカ,x
08,天体のメソッド,x
09,魔弾の王と戦姫,x
10,トリニティセブン,x

11,グリザイアの果実,x
12,大図書館の羊飼い,x
13,デンキ街の本屋さん,x
14,オレん家のフロ事情,x
15,毎度! 浦安鉄筋家族,B

16,ガールフレンド (仮),x
17,繰繰れ! コックリさん,x
18,オオカミ少女と黒王子,x
19,失われた未来を求めて,x
20,結城友奈は勇者である,x

21,甘城ブリリアントパーク,x
22,蟲師 続章 後半エピソード,x
23,ソードアート・オンラインII,x
24,異能バトルは日常系のなかで,x
25,白銀の意思 アルジェヴォルン,A

26,俺、ツインテールになります。,x
27,ヤマノススメ セカンドシーズン,x
28,テラフォーマーズ アネックス1号編,x
29,旦那が何を言っているかわからない件,x
30,カードファイト!! ヴァンガード レギオンメイト編,x

31,Fate/stay night Unlimited Blade Works,x
32,棺姫のチャイカ AVENGING BATTLE,x
33,神撃のバハムート GENESIS,F
34,selector spread WIXOSS,C
35,Hi☆sCoool! セハガール,x

36,(特番) 憑物語,x
37,怪盗ジョーカー,B

{総評}
表面的な意味にとどまらない、ジェンダーフリーが自然に表現された作品がいよいよ増えてきたように思う。そんなシーズンだった。
{寸評}
アカメが斬る!」A:エグい題材は好みではないが、人を殺すことの重さに正義も悪もないというテーマの一貫性、アクション作画のクオリティは最大限に評価できる。
白銀の意思 アルジェヴォルン」A:作画が振るわなかった回の方が多かったのと、キャラ退場の手段がワンパターンのきらいがあったのが残念だが、一般兵士たちに焦点をあてた“日常的な戦争”のドラマツルギーがかなり新鮮だった。
「毎度! 浦安鉄筋家族」B:畳み掛けるようなジェットコースターギャグで原作をさらにテンポアップ。春巻先生の複製がくだけ散る回で特に笑った。
怪盗ジョーカー」B:今期の大穴となった作品。キッズ向けの体裁に思えたが、アニメライター界のスタイリストで鳴らす佐藤大氏がシリーズ構成だけあってティーンズ層まで射程を広げた意欲作だった。レイアウトが折々でかっこいいのだ。アクションのキレもなかなかで、これはすたじおびゅうん!の参加が大きいかも。
selector spread WIXOSS」C:第一期シリーズで広げたドラマの風呂敷畳みを行った意図は誠実だったが、そのためにバトルの疾走感とドラマの陰影が弱まったのは否めない。

トム・アット・ザ・ファーム('13 カナダ、フランス/監督:グザヴィエ・ドラン)

これは角度を変えると色んなテーマが見えてくる作品で、その良い意味での散漫な脚本ぶりはまさにフランス語圏という印象をうけた。もっとも美しいのは、トムとその支配的立場にある亡き恋人の兄がふざけてワルツを天井が高く広々とした農作業小屋で踊るシーンで、しかしその黄金色の陽が満ちる中、すでに戸口には息子がホモセクシャルとは認めたがらない母親の姿がある。その隠れた可笑しみも、単純な解釈を容易には許さない監督の気概を感じる。純愛、ドメスティックバイオレンス、閉鎖的な家庭、田舎の後進性、さまざまな要素をはらみつつ、主人公トムと最終的に対照されるのは、同僚女性のサラだ。自由恋愛主義を地で行う彼女の軽やかさは、トムには手の届かないものであり、同時に選ばなかったものでもある。人間の自由意志とははたして絶対的な価値を持つものなのか、とラストシーンに思った。

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ (光文社古典新訳文庫)

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ (光文社古典新訳文庫)

新訳の影響もあってか、19世紀の短編とは思えないほど描写の筆致に時代からくる違和感がない。南北戦争に従軍してそこでのいざこざで死んだという作者フィッツ=ジェイムズ・オブライエンは長くなかった人生からいっても多作ではなかったそうだが、それでもアイデアの特異さと短編バリエーション(なお長編作品は書かなかった)の豊かさが著名作家陣とくらべても遜色ないのはこの傑作集で分かった。自分は特に中国ものの『手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙』のイマジネーションと展開の大胆さ、オカルトと喪われた時代のノスタルジーが典雅に絡んだ『なくした部屋』が好きだ。困窮の中のユーモアに体験性の切実さがある『ハンフリー公の晩餐』がトリとして置かれているのは構成が見事。

高い窓

高い窓

高い窓

気難しい富豪の未亡人からの依頼を受けた私立探偵フィリップ・マーロウは、彼女の秘書であるかたくなでどこか子供っぽい若い娘、マールの不幸そうな様子が気にかかる。そしてマーロウを尾行してきた無名の同業者と接触した後、彼は立て続けに起こる殺人事件により警察の捜査網にかかる苦境に陥る。
マーロウの人間的な面がこれまで読んできたシリーズの中ではもっとも出ているように感じて、これも好きな作品となった。たとえば下町のカウンター付きドラッグストアで、粋な言葉をあえて連発して「ハリウッドじゃああいう手合いがごろごろいるんだ」と皮肉られたり、傲慢な映画監督にののしられたバーテンダーにやつあたりで絡まれたり、極めつけはマーロウはもっとも救うべき“心”の、その壁を突き破れずに物語は終幕する。村上新訳が刊行中の現時点では「ロング・グッドバイ」と並んでこの「高い窓」が面白い。