劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning- ('12/監督:米たにヨシトモ)

テレビシリーズを再編集して、細部の異なるエピソードを組み立てなおす体裁の劇場版で、これまでに観た中ではもっとも違和感なく娯楽映画として楽しめた。「キャラクターの性格」「世界観を表現する美術設定とそのギミック」「SFアクションのためのガジェット」それぞれを過不足なくデティールアップすることで、新作制作部分と旧作分との混在に違和感がなく、同時にテレビシリーズ視聴者に飽きさせずにアピールを可能としている手際の何気ない巧みさ。ギャグシーンの切れ味ともども舌を巻く仕上がりだったと思う。女性キャラクターにさりげなく艶かしさをさらに盛っている辺りも、監督変更の醍醐味があって興味深く観た。前半エピソードはテレビシリーズの再演の形となっているシナリオだが、虎徹の"人生の複数の局面で最盛期をすぎたのを実感しはじめる悲哀"、バーナビーの"突然失われた黄金時代と過去のまま止まってしまった心の壁"というダブル主人公が担う普遍的な人生の悩みをさらにクローズアップ。それをバックアップする演出もよく噛み合っていた。