2021年夏期のアニメ視聴状況

Sonny Boy(dアニメストア):思ったよりずっと尖ったオリジナルアニメで、そうだ自分が毎期待ってたのはこういうのですやんとブチアガり。監督が脚本も担当するのは8割方カスだと思っているとここで述べても極論でないが、この作品は数少ない例外。江口寿史が原案のキャラクターも素晴らしい。

ゲッターロボアーク(NETFLIX):原作もアニメもあまり当たったことはないが、なまじ知っていてもそれぞれのメディアの間でストーリー接続にねじれがあるらしく、しかも原作は未完だそうなので、ほぼオリジナルアニメとして視てよさそうな空気。作画はガッタガタな箇所が半分以上あるかもしれないが、まあ原作者ケンイシカワも画面に統一感がないともいえるし…とすべて良い意味で適当な空気が漂う。令和だからこそ視たいアニメ。末法末法

 

<前期からの継続>

遊☆戯☆王SEVENS(ニコニコ動画):ゴーハ六兄弟編はいまのとこあんまり好みじゃないかな。まあグルグルの正体までは視るはず。

SHAMAN KING(ニコニコ動画):このご時世に作画よくがんばってる。キャストも豪華である。このどんどんキャラクターが増えていく第二クールがもしかしたら一番面白いかもしれない。

 

あとは「ぶらどらぶ」は視るつもり。「ラブライブ スーパースター」ももしかしたら。

2021年6月に観た映画まとめ

閃光のハサウェイ ('21 監督:村瀬修功)

ロボットアニメでありながら、徹底して照明効果やカメラ構図を実写映画寄りにすることで、従来のガンダムシリーズのファンに新味を提供するとともに、そのシャープなビジュアルイメージによって新規の客もつかんだ。テロリズムに走る青年が主人公という、アニメ映えしないはずの原作を同時代感のある空気を画面から漂わせた村瀬監督や小形PDの功績は、トピックを超えて事件である。

 

ビーチ・バム まじめに不真面目 ('19 アメリカ/監督:ハーモニー・コリン)

(たぶん)90年代初頭のフロリダ。大富豪の妻を持つ詩人の主人公は、彼女の死によってホームレスに身を落とす。だが以前から思うがままの無軌道人生をおくっていた彼は恬として臆することなく、亡き妻の願い通りに詩をつづり、人生を味わい尽くすのだった。…実話がベースということで、ハートウォーミングに仕立てる手もあったと思うが、この主人公の所業はかなりアウト。車いすの老婆(たぶん妻が雇ってる庭師の母)を転がしたり、金を奪うために友人と共に見知らぬ老人の頭を酒瓶で殴ったりする。しかし、なぜだかあまり観ていて引っかからなかったのは、コンプラ全盛時代にあってあえてこういう時代もあったのだと厚顔に映画として仕立ててくる制作上の覚悟を見たからかもしれない。芸術の発露は無原罪かという、常に問われる問いをすらーっとスケーティングしつつキュートで爽快な偉人伝になっている。マシュー・マコノヒーのウェーヘヘヘという笑い方とネコチャンがかわいい。ネコチャンは無事。フロリダの夕焼けは最高。なおタイトルは渚のろくでなしという意味。

 

水を抱く女 ('20 ドイツ、フランス/監督:クリスティアン・ペッツォルト)

ギリシャ神話を大元とする水の精霊「ウンディーネ」伝説を、現代を舞台に大胆に翻案。不条理さと陳腐さとを常に行き来する90分間で、その緊張感こそが、人生における恋愛の二律背反だよなあと思案する。痴情のもつれのエネルギーとはそれだけで畏怖すべきものなのだというのが、愛した男に捨てられる宿命を持ちつつ相手の運命を握る女の悲劇に込められたものではなかっただろうか。冒頭、キュレーターとして観光客をガイドするウンディーネは恋人から別れ話を告げられる。心を自分自身でまとめかねているような落ち着かない様子は、整った顔立ちさえ魅力をぼやけさせる。しかし新たな出会いからより満たされた愛を実感した頃から彼女はみるみる輝きを増し、そしてその美しさが頂点に達する頃、決定的なシーンに辿り着く。そこまでが、微妙な画角コントロールと繊細な照明センスとで、なめらかに心の変化が映像として定着させられていく。そして終章ではおとぎ話のように黎明のような色彩で、最後の愛が囁かれることとなる。

 

漁港の肉子ちゃん ('21/監督:渡辺 歩)

細身の小学生女子とボンレスハムのようにふくよかな母という組み合わせが既にフェティッシュなのは気のせいだろうか。だから中盤を過ぎて明かされる親子の秘密については意表を突かれたんだよなあ。ロジック、あったんかい! …日をまたぐと勢力が入れ替わっている高学年女子の学級事情、端正な顔をくしゃおじさんムーヴで緊張を無意識に解くチック症の同学年男子、血縁もないのに不思議なほど親切な焼き肉屋店主。世界は矛盾のパッチワークで、しかし足元が揺れる防波堤に繋がれたボートで暮らすキクコの眼にはすべてが澄んだカラフルさで映るのだった。猥雑さと透明感が同居する色彩設計が完璧にすばらしいね。常に不定形に動き続ける、不安でいて魅惑の人生観をみせる蓋然性の高いアニメーション。

 

クワイエット・プレイス 破られた沈黙 ('21 アメリカ/監督:ジョン・クラシンスキー)

シリーズ前作は観てないが、宇宙からきた音でおそってくる奴から逃げるんだね、人類は滅亡した!で理解した。三人兄弟の長女が、オタク知人に似てたりバルテュスの「コメルス・サン・タンドレ小路」の少女を思わせたりと、つまり実在感に満ちていて良いキャスティング。だから中盤で彼女を連れていこうとする蛮性人類ズにはモンスター以上の嫌悪感を持たされるのだった。あと特に印象的だったのは、男の妻の遺骸のシーンね。人生経験薄い子供にはあれは恐怖たまらんね。穏やかなタイプの大人に潜む狂気。かくもあらゆるホラー展開が続いて、最後には、多様性の称揚で収めるんですよ。もうその手際が少しもクサくなくてね。そうそう自分が最新映画に求めてるのこれなんですよって嬉しくなった。母親が自分の子を「あの子こそ生き延びるべき子なのよ」って心からの表情で他人に訴えるのもグッときた。シャイニング。

 

Arc アーク ('21/監督:石川 慶)

ダンスのシーンからすでにカメラワークは凡庸、キメポーズに溜めがなくて照れてちゃダメだお!という印象が生まれたんだが、終盤に近付きいよいよ邦画紋切り構成は極まる…が、そこで吹雪ジュンの臨場感あるせん妄シーン、それを経ての小林薫との雪の駐車場の年甲斐のないキャッキャッ描写で、ああここまで突き抜けて愚直に演出するなら、それはそれでアリだな。これがクライマックスになるSF、それが日本映画なんだって、観ててこっちも踏ん切りが着いた。あともう少し雰囲気を締められるとすれば、寺島しのぶとの対立構図に近い緊張関係のある共感をもっと全編に引っ張っておくのが良かったかも。

2021年4月に観た映画まとめ

私は確信する ('18 フランス、ベルギー/監督:アントワーヌ・ランボー)

妻殺害への冤罪が疑われる男を、その娘と親しいがために救おうとする調理師のシングル・マザー。やり手の弁護士を探して助手の役目まで負う彼女の行動力はときに常軌を逸しているのではと感じるように描かれ、じっさい劇中の展開で職を失うが、まだ幼い息子の信頼だけは繋ぎ留めることにより映画のバランスは保たれた。それは結末で、審議の真偽よりも裁判がいかに公平に行われるか、その手順を踏む意味をより重視するテーマに結実することでも確認される。

 

ノマドランド ('20 アメリカ/監督:クロエ・ジャオ)

ドキュメンタリー風味の映像詩という基本構造だが、観た経験から時間を経るごとにふしぎとドラマ部分が浮き上がってくる。矛盾との絶え間ない会話こそがアメリカという国だと、移民系の監督が静かに宣言するその残像としての事々。家を持たないだけで帰る場所がないわけじゃない。逆に言えば、誰にとっても最高な終の棲家なんて幻想にしか存在しない。だから荒野を走りつづける意味がある。そこから見えてくる乾いた大地は限りがなく風が常に抜けていく。

 

DAU.ナターシャ ('20 ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア/監督:イリヤ・フルジャノフスキー、エカテリーナ・エルテリ)

何度説明を読み返しても、あまりの規模の大きさや正しい意図がよく理解できないが、ソ連時代の実在した軍事都市をまるごと再現するプロジェクトの一環で撮影された劇映画。ゾッとする尋問の模様のリアルさはまさしく“凡庸な悪”そのもの。それと呼応するラストシーンの主人公の激情は、巷間にありふれたもので、つくづく人の世を生きるのがしんどくなる。続編は期待してるけど、けど今からしんどいなあ。

 

Away ('19 ラトビア/監督:ギンツ・ジルバロディス)

主線のない色彩の面で構成されたアニメーションが美しく、ひとりぼっちでここではない何処かを目指さなくてはならない主人公にずっと付き添う鳥が単純に愛らしい。そして“盗んだバイクで走り出す”その先を想像したかのような謎めいた結末。海外アニメを観る喜びが短い上映時間の中に詰まっていた。なかでも吊り橋をめぐる攻防は、高所恐怖症を煽ってくるスペクタクルでハラハラ。鏡のような湖面に鳥の群れが乱舞するのが映るシーンは鮮烈。

 

(ネット配信で視た映画)

Mank/マンク ('20 アメリカ/監督:デヴィッド・フィンチャー)

全編モノクロなこともあるが、これは映画館で集中して観るべきと後から気付いた。時系列がこまかく前後するのも、気を付けてないと物事の関係が追えなくなる。あえてクラシカルなカメラワークや人物の対立構図で作られている中で、女性の主観のありかに気を払ってある現代性が際立つ。ボスの愛人を兼ねるブロンド女優は意見を口にすることに掛けては取り巻きの役員たちより率直だし、マンクの妻は口数少な目ながら同志のようでもある。

第61回2021夏調査

アニメ調査室(仮)さんにて開催中。以下、回答記事です。

 

2021夏調査(2021/4-6月期、終了アニメ、47+4作品) 第61回

01,MARS RED,F
02,バクテン!!,x
03,転スラ日記,x
04,ましろのおと,x
05,スーパーカブ,x

06,灼熱カバディ,x
07,美少年探偵団,x
08,バック・アロウ,B
09,オッドタクシー,z
10,シャドーハウス,B

 

11,おしりたんてい,x
12,86 エイティシックス,x
13,ドラゴン、家を買う。,x
14,キラッとプリ☆チャン,x
15,やくならマグカップも,x

16,さよなら私のクラマー,x
17,ヘタリア World★Stars,x
18,イジらないで、長瀞さん,x
19,恋と呼ぶには気持ち悪い,x
20,ゾンビランドサガ リベンジ,x

 

21,フルーツバスケット The Final,x
22,ゴジラ S.P (シンギュラポイント),A
23,Fairy蘭丸 あなたの心お助けします,F
24,幼なじみが絶対に負けないラブコメ,x
25,ひげを剃る。そして女子高生を拾う。,x

26,カードファイト!! ヴァンガード overDress,x
27,セブンナイツ レボリューション 英雄の継承者,x
28,究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら,x
29,スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました,x
30,擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD,A

 

31,バトルアスリーテス大運動会ReSTART!,x
32,すばらしきこのせかい The Animation,x
33,異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω,x
34,結城友奈は勇者である ちゅるっと!,x
35,憂国のモリアーティ 第2クール,x

36,セスタス The Roman Fighter,x
37,Vivy Fluorite Eye’s Song,F
38,七つの大罪 憤怒の審判,x
39,聖女の魔力は万能です,x
40,NOMAD メガロボクス2,F

 

41,蜘蛛ですが、なにか?,x
42,戦闘員、派遣します!,x
43,SSSS.DYNAZENON,x
44,いたずらぐまのグル~ミ~,x
45,(全50話) りばあす,x

46,(全23話) 魔道祖師 (前塵編/羨雲編),C
47,(全9話) レゴタイム レゴ モンキーキッド,x
48,(全4話) レゴタイム レゴ フレンズ (2期),x
49,(全8話) 黒ギャルになったから親友としてみた。,x
50,(全12話+特別編) ワンダーエッグ・プライオリティ,x

 

51,パウ・パトロール シーズン3,x

 

《寸評》

「バック・アロウ」B:ロボット描写はあまりピンとこなかったし、最終決戦には寝オチしてしまったりと、中島かずきの熱血展開は今回も合わなかったわけだが、群像劇としてはまずまず楽しかったし、会話の掛け合うテンポは面白かった。最後に明らかになった大設定もインパクトはあった。

「シャドーハウス」B:先に原作を一気に読んでしまっていたので、ついついそちらと比べてしまったのだが、丁寧で無難なアニメ化という印象。カメラのレイアウトでもっとアニメならではの見せ方が欲しかったなということがある。しかしそれでも、エミリコたちの愛らしさが一番に大事にされていたのはそれはそれで良かったと思う。終幕は友情と信頼の暖かさが残った。

ゴジラ S.P (シンギュラポイント)」A:オチぐらいはもっとクールをかなぐり捨てて情感を出してきてもいいんじゃないのという、些細な“解釈違い”はあったものの、これまでにないSFアニメを作ろうとしたスタッフの芯には非常に堅固なものを感じて安心して楽しめた。ポップな色彩感覚などの画面設計のすばらしさも特筆もの。

「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」A:情念に重心を置いたあえてのアナクロさを一貫した監督の手腕、企画を出した製作の心意気に好感を持つ。バランスの難しそうなキャラクターデザインを制限がありそうな中でよく動かしてもいた。

「魔道祖師 (前塵編/羨雲編)」C:道士の妖怪退治ものと有力豪族の派閥争いという二筋に意識を集中しても尚わかりづらいという構成の整理のなさには視ていてくじけかけた。作画は美麗なまま保っていたが、できればキャラクターの顔のバリエーションは増やしてほしい。ともあれ、中国Webアニメの隆盛を知るには良い題材だった。

2021年5月に読んだ本まとめ

〈わたし〉は脳に操られているのか

 脳が単なる電気信号のやり取りで動くシステムに過ぎないのなら、人間の感情や“自由意思”に果たしてこれからも意味を見出せるのか?という命題をめぐる考察。各章の冒頭に示される個別の具体例は読みごたえがあったが、仮説を検討して主張を立てていく醍醐味はやや薄かった。

2021年3月に観た映画まとめ

シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll ('21/監督:庵野秀明摩砂雪鶴巻和哉前田真宏中山勝一)

ラストシーンが寂しくもあり爽やかでもあり感無量。色々と衝撃を振りまいてきた本シリーズがこうしてジュブナイルとして大団円を迎えた事に、様々な困難を越えて形を為したスタッフ諸氏に、90年代に青春を送った者として感謝を述べたい気持ちで満たされた。同じ女としては、リツコやミサトのテレビシリーズからの吹っ切れ方に快哉を送りたい。前半の農村風景と、後半の量子論SF世界をメカ描写の力で結びつける剛腕もギリギリ成功。

 

あのこは貴族 ('21/監督:岨手由貴子)

平熱で綴られる端正な東京の日常。すれ違いの出会いで人生を変えられる瞬間の密度こそ、東京という複雑な層の街の本質であり、日本人にとって東京が単なる首都以上のアイコンであることの意味でもある。令和の「東京物語」。たった一人の理解者がいれば生きていける街。人も街も顔は一つだけじゃないと教えてくれる場所。ところで、主人公の一人の実家の地に足が着いた裕福さを映した諸シーンが特に秀逸。いっけん手が届きそうな箇所にこそ格差のエッジは潜む。その裏面として洗面台に喀痰されるシーン。

 

すばらしき世界 ('21/監督:西川美和)

職場で徒党を組んでだれかをいじめる時、どんな顔をすればいいか分からない。分からないことさえ責められる社会においていかに“正しく”生きればよいのか。そんな悪い意味でも広く野放図な世の中を、心の中でどう受け止めればいいのか。そしてどう名付ければ落ち着くのか。主人公が刑務所という一つの安寧の地から旅立ち(雪舞う白い空)、嵐の宵に雲厚い空に昇っていった生のシークエンスを考える時、為されなかった仕草、発せられなかった言葉の意味が手渡されてくる。喧嘩相手の耳をかじる役所広司の演技はまさに憑依されたかのようで、そして映画としてのエロスを一手に負ったキムラ緑子のささやきがいつまでも耳元にリフレインする。力強さと軽妙さを併せ持った重奏の作品。人がしゃべる事そのものがそもそも滑稽なのだ。だからシリアスな状況でも笑いは常にしのび込む。

 

〈ネット配信で視た映画〉

蜘蛛の巣を払う女 (’18 イギリス、ドイツ、スウェーデン、カナダ、アメリカ/監督:フェデ・アルバレス)

人類とその生存空間が恐ろしくなる前作よりもグッと安心して観られる。こちらの神経過敏がやや収まったリズベットも自分は嫌いじゃない。でもなー。やはり一言でいうと凡庸なサスペンスアクションと評してしまうのに吝かでなかった。

 

2021年2月に観た映画まとめ

ウルフウォーカー ('20 アイルランドルクセンブルク/監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート)

劇中の敵対関係の寓意面が自分にはあまりピンとこなかった。アニメとしてのビジュアルはかなり好みなんだが。オチもあまりに予定調和すぎる。簡単な決着はないよという具合の方が納得できた。同スタジオの「ブレッドウィナー」のように。

 

国葬 ('19 オランダ、リトアニア/監督:セルゲイ・ロズニツァ)

うん、予想よりずっと寝た。だがその“社長の葬式フィルムを全社あつめられた文化ホールで見せられる感じ”が、ドキュメンタリーの中で延々と列を歩かされるソ連国民とマッチして、自分がその場に立って表情の作り方、退屈のしのぎ方に困っているような逆アトラクション感はあった。